
なにかと公開前に問題になった、李纓監督によるドキュメンタリー映画『靖国 YASUKUNI』をようやく観ることが出来ました。東京では3日から渋谷シネ・アミューズで上映されていますが、他ではシネカノン有楽町1丁目で今月10日から、と観られる場所は限られています。今日は初回上映を9時ごろギリギリ購入出来ましたが、映画を観終わった頃には本日分は全て売り切れになっていました。どうしても観たい方は朝早くにチケットを購入しておくのがいいかもしれません。
さて内容について。これほど大騒ぎする話だったのか・・・さっぱり分かりません。全く反日映画ではなく、まさにドキュメンタリー映画といった出来具合でした。監督が10年間に渡り撮影した映像が使用されており、裏ではこんなことが行われていたのか・・・など靖国神社を知る上では大変参考になる映画でした。映画を観ないで「反日」と決めつけて街宣活動をした右翼系団体、それを恐れて上映を取りやめた劇場に問題があります。
しかし問題を残す映画であることも間違いありません。それは「ドキュメンタリー映画」がどこまで物事を追及できるのかということです。全編に渡って登場する、刀匠刈谷直治氏は「自身の映像がこうした使われ方をするとは知らなかった」としてシーンのカットを要望しています。しかしもちろん制作側は応じていませんし、映画を観た私としても、これらをカットすると映画が成り立たないと思います。
朝日新聞によると、これらの問題は『期待権』の問題で、ドキュメンタリー制作に関して「編集・表現の自由を上回る権利があるとは思えない」という見解があるようです。さらに「取材後に相手の要望に応じるのを前例にすると、要望通りにしか撮れなくなる。それはドキュメンタリーといえない」といった意見も。この意見には同意できる部分もありますが、私は刀匠に監督があらかじめ映画の趣旨を伝えていたかについても少々疑問です。
さらに問題視された要因の1つに文化庁によって芸術文化振興助成金750万円が支払われていたことが挙げられます。助成金が支払われない映画のほうが多数ある中で、あえて文化庁がこの映画に助成金を支払った点は納得がいきません。助成金支出の基準から考えても妥当であるか否かはグレーです。
最後に。映画館の前は朝早いにも関わらず警備員が5〜6名ほど警備にあたっており、10時前後になると写真のような機動隊の車両が待機していました。

なおシアター内でも上映中、前方に警備員が1名待機しているなど、ちょっと違和感がありました。前述の通り、映画自体は特に偏ったメッセージを流すプロパガンダ映画ではなく、単なるドキュメンタリー映画で、全く反日映画ではないことをもう一度述べておきます。ついでにパンフレットも出来が良く、靖国Q&Aのようなコーナーに「A級戦犯の分祀は出来ないの?」というような問いがあり、答えに「神道では一度合祀した御霊を分けることは出来ず、そもそも神道で言うところの分祀とはコピーのようなもので、他の神社に祭神を分けることを意味する」と正確に書かれています。制作側の認識としては全うではないでしょうか。
追記:
映画終盤のスライドショーに「南京事件」で登場するようないわく付きの写真が何枚か映されますが、その中に明らかに中国軍の拷問器具の写真がありました。あれは何を考えて最後に映したのか、それまでの映画としての妥当性を著しく下げているとしか思えません。