Column: 「SIMロック」解除について、現段階での見解(UPDATEDx2)

Original Story: 2010.03.28 Sun. 09:19

1. 「SIMロック」解除に関する動き

総務省は、2007年から国内携帯電話におけるSIMロック解除を本格検討しています。当時開催された「モバイルビジネス研究会」では、各キャリアはSIMロック解除の方針に慎重姿勢を見せたものの、NTTドコモの関係者がSIMロック解除の検討を示唆する発言をしたことがニュースになりました。ドコモ前社長の中村氏も、「SIMロックを解除するなとは言わないが、議論をする必要がある」と述べたり、「ドコモのケータイにソフトバンクのSIMを挿しても『Yahoo!ケータイ』すら表示されない状況をどう判断するか」などの本質的問題を提起しました。

管轄官庁である総務省は、同年6月、2010年をめどに携帯電話の利用規制を大幅に見直し、「SIMロック解除」によって携帯電話会社を変えても機種はそのまま利用できるというシステムを取り入れる方針を明らかにしています。今年3月、ついに同省は、キャリア各社が共通して採用する第3.9世代規格サービスLTE導入を踏まえて、SIMロックの解除について検討することを表明、4月2日には、公開ヒアリングが開催される運びとなっています。

このように、国内のSIMロックフリー端末解禁の流れは徐々に強まっています。一方、キャリアは慎重姿勢を崩しません。そうした方針とは逆に、一部のユーザーはSIMロックフリーを待ち望んでいるようです。それは、米国のGoogleが発売した「Nexus One」がSIMロックフリーであることや、携帯電話ではないものの、Appleの「iPad」がSIMロックフリーであることにより、その利便性を体験したことも要素の一つだと思います。

では、SIMロックフリーは本当に必要なのか、ビジネスモデルは成立するのか、仮にSIMロックフリーが当たり前になったとき、ケータイはどのように変わるのか。実は、こうした具体的なことはあまり論じられません。ここでは、そのような点について、簡潔に見ていきます。

2. スマートフォンとケータイの違い

まず私のスタンスを。私はSIMロックフリーは一部のスマートフォンで導入される以外は、特に必要のないものだと思っています。それは、現行のいわゆる「ケータイ」全域にSIMロックフリーが広まっても、何らメリットが無いからです。

今の日本のケータイは「キャリア依存」もしくは「キャリア主導」のサービスで成り立っています。この点は、キャリアに主導権があるゆえにSIMロックフリーが進まないという論理でよく批判されます。ですが、キャリア依存のサービスには、キャリアメールや「iモード」などのインターネットサービスが含まれており、現状、これをケータイから切り離すのは困難です。

他方、スマートフォンは予めこれらのキャリア依存のサービスが組み込まれていないので、もともとキャリアに依存していません。ですから私は、一部のスマートフォンでSIMロックフリーが一般的になるのは必然だと思っているのです。今のキャリアロゴが刻印された国際的なスマートフォンは不要です。

販売モデルもいたってシンプルで、現行方式を変える必要はありません。ドコモを例にすると、同社ではスマートフォンを「端末購入サポート」という特別割引を適用して、3万円~4万円程度で販売しています。将来のSIMロックフリーのスマートフォンもこのままで良いのです。それにより、キャリアはユーザーの囲い込みが出来ますし、ユーザーはドコモ以外のキャリアを最初に選ぶことが出来ます。端末価格でも競争出来るし、価格高騰の恐れもありません。従って、スマートフォンでは、SIMロックフリーをスタンダードにすることはメリットがあり、様々な弊害もないと考えます。

ところが、前述の通り、いわゆるケータイは話が異なります。特に高機能ケータイでは、その「高機能」はキャリア依存度が高く、SIMロックフリーになっても、ユーザーはそれほど自由なことは出来ません。ドコモがSIMロックフリーの端末を自社から発売したとして、ユーザーが「ソフトバンクモバイルが良い」ということで後からSIMカードを入れ替えて、ソフトバンクのどれほどの機能が利用出来るでしょうか。

そもそも、SIMロックフリー端末はメーカー直販で提供されるのか、その際、キャリアサービスはどうなるのか、販売モデルはどうなるのか、端末価格はどうなるのか、メリットの不在とともに、疑問点や難点、課題が山積しています。つまり、ケータイのSIMロックフリー化は現状で全く魅力的ではないのです。ですから私は反対しています。

もちろんSIMロックフリーが有効なケータイも存在します。それは、シニア向けや子供向けの制限付きケータイです。キャリアサービスに依存する必要のないシンプルなケータイでは、むしろメーカーが「これ」という端末を作り、SIMロックフリーで販売したほうが、家族は、契約状況に応じてキャリアを自由に選べます。これはキャリアという垣根を越えた「安全」や「安心」を提供する上で重要です。勿論、現在のキャリアによる独自の「安心」施策は、当然に適用されるシステムが構築されることが望ましいです。

3. ケータイの所有権の問題

これまで述べた話とは別に、議論されるべき事案があります。それは、割賦契約などを満了した端末に関しては、キャリアはユーザーの希望によりSIMロックの解除を積極的に導入すべきということです。ソフトバンクのケータイを例に挙げると、同社のケータイはSIMカードを抜くと殆どの機能を利用することが出来なくなります。また、ドコモのスマートフォン「Xperia」も同様です。この状況はとても不合理で、ユーザーにとって一方的に不利と言えます。

数年前に比べて、現在の端末価格は格段に上がりました。それは以前のインセモデルが破綻したことにより、言わば健全的解決のための仕方がない措置だったと思います。しかし、それならば、4万円~6万円程度で購入するケータイにSIMカードの有無による機能制限があるのは納得出来ません。

この問題に関しては、ソフトバンクの孫社長が2006年の会見で、記者の「新スーパーボーナスによる分割払いを完済した端末に対して、SIMロックを解除する考えはあるか」という問いに対し、「端末代金を回収し終わった後であれば、理屈的にはあり得るかもしれない。これまで考えたことがなく、今言われたばかりなので即答はできないが、仮にそうした場合のデメリットがないかなども含め検討していく」と回答しました。端末の所有権は契約満了の時点でユーザーにあります。私はその点は強く要求します。

4. まとめ

総務省の公開ヒアリングでは、SIMロックに関する、各キャリアの最新の考えが明らかになります。この問題は、それを踏まえて再度考察すべきです。現段階では、私は、一部のスマートフォンではSIMロックフリーが妥当、ケータイでは、シニア・子供向けを除いては、メリットの不在からSIMロックフリーは不要、但し、所有権の問題から、契約満了時点で希望するユーザーには、キャリアはロック解除を行うのが筋と考えています。

UPDATED:
読売新聞の報道によると、総務省は27日、「SIMロック」について解除するよう携帯電話会社に求める方針を固めました。2010年末から発売される次世代携帯電話が対象となり、法制化による義務付けも検討するとのことです。同省は「契約から一定期間がたった次世代携帯電話の端末について、希望者にはSIMロックの解除に応じるよう」求めます。

同省の「契約から一定期間」たった次世代携帯電話についての希望ユーザーへのSIMロック解除要請は、私の主張と同様です。これは良い方針だと思います。しかし、法制化による義務付けについては、キャリアに幅広い負担がかかる恐れがあるので、一概に賛成できません。

UPDATEDx2:
KDDIは、本日31日、都内で記者会見を開催し、総務省が来年度中をめどに見直しを図る「SIMロック」システムについて、同社の方針を示します。

Comment

面白かった。けど、SIMをロックする必要は無いと思いますよ。というのも、契約満了していなくても端末はユーザーの物です。キャリアのサービスも端末によっては利用出来ないサービスが有るというだけです。それをショップの店員が全て把握出来なければなりませんが。
  • 2010/03/29 09:51
  • tokumei
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筆者の「SIMロックフリーが広まっても、何らメリットが無い」とする結論は納得出来ません。

まず、端末メーカーからの視点が抜けています。
現状では端末メーカーはキャリア毎に端末(電話機)を開発せねばならず、その分だけ余計に開発コストがかかる事になります。
そのコストは、キャリアへの納入価格に上乗せされ、そしてキャリアからユーザーへの販売価格に上乗せされます。

各キャリア毎のサービスの違いは否定しませんが、ソフト的に対応すべきであり、ハードまで限定する必要は無いと思います。

ハードの競争はメーカー間でやれば良いのであって、キャリアはハード依存しない範囲のサービスで競争すべきです。
  • 2010/03/29 21:15
  • SS
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  • Edit
とはいえD社においては、端末の型式認定の名目で多くの余剰技術者(それとSSさんも指摘されている彼らの仕事量を維持するための要求スペック、、)を抱えている面もあって、上記のコメントとは裏腹に非常に限定されたSIM-Free化を指向するのではないでしょうか。キャリアが構築した既存のサービスをスキップ可能な、iPhoneのような魅力的な端末の普及ペースが、彼らが考えるよりも速ければ、何らかの破綻をきたすでしょうが、、わりと世の中の主流はもっとずっとゆっくりなのでは、、と思います。

個人的には、たとえば公共施設や学校や塾にSIM-Free端末を常備してもらって、下の子供にはプリペイドSIMだけ持たせる、という様なことができれば、経済的には少し助かりますね。
  • 2010/03/29 23:17
  • replaceable
  • URL
>tokumeisさん
コメントありがとうございます。キャリアとの割賦契約中のケータイについての所有権に関してはともかく、キャリアサービスは現時点では依存度が高いので、どのようなSIMフリーモデルを提示出来るかが掴みきれません。今でもロックを解除することは可能なものの、出来るのは電話や一部のサービスくらいです。スマートフォンではないケータイのSIMロックフリーにどれほどの魅力があるのか、考察が必要ですね。


>SSさん
コメントありがとうございます。

実はその点については追記が必要だったと思ってました。ご指摘の通り、このコラムにはメーカーの思惑が欠如しています。ですから、もちろん世界を見据えた戦略を打ち出さなければいけないこの時期に、いつまでも内側ばかりに囚われていいのかという問題点はあります。

ただ、ソフトによるサービスが現状ではハードに依存しています。仮にSIMを入れ替えられるだけで、「iコンシェル」や「LISMO」や「Y!~」が利用出来るならば問題ありません。ですが、今のところ実現可能性は厳しいと思います。

SIMフリーのケータイがあってもいいとは思いますが、結局はキャリアによるインセでSIMロックケータイの価格下落→キャリアサービスの充実による囲い込みという流れが強まるだけで、SIMフリーケータイに果たして需要が集まるかは疑問です。たいていの人は安価な方を選び、ロックが付いてても気にしないでしょうし・・・。

「ハード依存しない範囲のサービス」がハードを縛っている現状を打開すると実現できるかもしれません。


>replaceableさん
コメントありがとうございます。

仰るとおりなので、特に私が書くことはないのですが、一点だけ。

上記SSさんの鋭いご指摘へのコメントに加えて、仮にメーカーが今出せるSIMロックフリー端末があるとすれば、それは電話とSMSが出来て、カメラが付いてるシンプルなものになるでしょうね。だから私は子供向けやシニア向けにはふさわしいと書きました。

replaceableさんのお書きの通り、公共施設や学校などへの安全な制限ケータイの配布でSIMフリーは役立つと思います。その点はケータイのSIMフリー化に賛成です。

いずれにしても、総務省がキャリアに要請する方針なのは、第3.9世代ケータイにおける、「一定の契約期間が過ぎたケータイ」について、ロックを解除することに応じる、というものなので、SIMフリー端末をメーカーが直販するという話ではないことがポイントですね。

3月31日にはKDDIがSIMロックについての意見を示しますし、2日には総務省で公開ヒアリングが開催されます。今後もこの問題には注目し続けます。何かご意見、ご指摘ございましたら、お気軽にコメントをお願いします。「会議は踊る」とても重要なことです。
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